(品川海上眺望図 明治十二年)
明治初年の東京湾は、沿岸が浅瀬になっていて大型船が付けられなかったために、このように沖合に停泊し、そこから小型の舟で陸地と往復していた。この時代の大型船の主流はまだ帆船だった。
この図柄は、その帆船を描いたもの。三本マストから無数の艤装が伸びている。
海は凪いで静かな水面が広がっている。帆船の底の部分が水に映っているところから、海の静けさが伝わってくるようである。
(大森朝乃海 明治十三年)
これは品川の南に隣接する大森の海を描いたもの。二人の女が船を浮かべて漁らしいことをしている。大森の海は徳川時代から沿岸漁が盛んで、江戸前の魚が多くとれた。
これは女の手わざのようなものだから、大物をねらっているのではないだろう。釣糸を海底に垂らしているようなので、はぜとかあいなめとかいった海底魚をねらっているのだと思う。
船が大きく横に傾いているところが、絵に動きがあって、面白い。
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