生けるトランプ死せるカストロを罵る

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キューバ革命の「英雄」フィデル・カストロが死んだことで、トランプがツイッターで吠えた。カストロを残忍な独裁者と呼び、彼の「業績」を「盗み、想像を絶する苦悩、貧困、基本的人権の否定」だったと断定した。

これはアメリカの資本家階層のキューバ観をトランプが代表して表明したということだろう。カストロのおかがでアメリカの資本家たちはキューバで金儲けをする機会を奪われた。だからカストロは不倶戴天の敵というわけだ。カストロに追い出されたキューバの旧資本家層も、カストロへの憎しみをトランプと共有しているようだ。カストロの死をもっとも喜んだのは彼らだったからだ。

トランプがオバマの対キューバ融和政策を批判していることは周知のことだ。これをトランプは、アメリカがキューバに救いの手を差し伸べたと捉え、キューバの一方的な利益になるものだと言ってきた。しかし実際はそうではないことは、現実をきちんと見ている者の目には明らかだ。

近年キューバへの中国の接近ぶりが際立つようになり、両者の関係はキューバ国内に中国の軍事拠点を設けるところまで発展する勢いだった。それがアメリカにとってどんなに耐え難いことか、軍事専門家でなくともわかろうというものだ。オバマはその危険を回避するために、キューバに手をさしのべ、キューバに対する中国の影響力が高まることを牽制したと言える。だからオバマの対キューバ融和政策は、むしろアメリカの安全保障のために行われたと言ってよい。

トランプにはそういう外交的な背景は一切見えていないようだ。彼は自分自身の対キューバ政策を明らかにしてはいないが、アメリカの資本家がキューバで儲かるビジネスができるように、求めるに違いない。だが外交というものはそんなに単純なものではない。アメリカの一方的な利益になるような交渉は、少なくともキューバを舞台にしては成り立たない。キューバとの外交交渉は、不動産売買の取引とは違うのだ。

トランプはカストロを罵って残忍な独裁者と呼び、「盗み、想像を絶する苦悩、貧困、基本的人権の否定」こそがその業績だったと罵ったが、こうした懸念はむしろトランプその人について、世界中の人々が抱いていることではないのか。






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