アレッポの虐殺

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長い間シリアの反体制派の拠点だったアレッポがアサド政権によって制圧されたことに伴い、大規模な虐殺が起っているようだ。アサド政権は、アレッポの住民全体をテロリストとみなし、成人男性はもとより女性や子どもまで殺している。こうした事態に対して国連などが憂慮を表明しているが、アサド政権による虐殺は一向おさまる気配を見せないようだ。

アサド政権の攻勢の背景には、プーチンのてこ入れがある。プーチンはこれまで欧米の顔色を伺う様子を一応見せてきたが、トランプの登場を見極めて、そうした遠慮を一切かなぐり捨て、アサド政権によるアレッポ制圧を全面的にバックアップしてきた。だから今回の事態については、ロシアの責任を指弾する意見が多い。

この事態を見ていると、二十世紀後半に、ユーゴや中部アフリカで起った民族浄化を思い出させられる。シリアの場合には、民族対立ではなく、宗派とか部族間の争いが原動力になっているようだ。イスラムの君主国では、国家意識が希薄で、国民は君主の私有財産のような位置づけになっている。だから人間を基準にしたものの考え方が通じない。君主に逆らうものは、人間としてではなく、単なるものとして、そのものが何者かにそそのかされているのだから、それを武力で粉砕するのは当然のことだ。神もそれを許してくださる。そういう考え方が支配的だ。

アサドは君主ではなく、一応選挙によって選ばれた一介の政治家だが、どうやら絶対支配者という立場が、君主と同じようなものの見方をさせているらしい。アサドにとっては、自分に歯向かうものは、けしからぬ連中にそそのかされているのであり、そういう不逞のやからは八つ裂きにして当然なのだろう。

プーチンがなぜアサドにこれほどまでの肩入れをするのか。まさか独裁者同士の仲間意識がそうさせるわけではあるまい。そのプーチンが明日(12月15日)日本にやってくる。安倍政権はこの男をどのように遇するつもりだろうか。まさか「アレッポの制圧おめでとうございます」、と言うつもりではあるまい。





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