小林清親の花鳥動物画

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(猫と提灯 明治十年)

小林清親は、東京名所図刊行の傍ら、花鳥や動・植物をモチーフにした版画も製作した。それらは、実用的な価値のある東京の名所図とは違って、あまり売れなかったようだが、清親は自分の画家としての矜持から、こうしたテーマも積極的に描いたようだ。

この図柄は、提灯の中に逃げ込んだネズミを追い詰める猫を描いたもの。頭だけかくして尻尾を出したネズミに猫が襲い掛かっている。猫の表情は真剣そのものだ。清親はよほどまめに猫の動きを観察していたに違いない。

暗緑色を背景にして、明るい色のモチーフが浮かび上がるように工夫している。陰影を強調しないのは、日本画の伝統を踏まえているのだろう。

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(柿に目白 明治十三年)

梅に鶯は日本画におなじみのテーマだが、柿に目白はどういう点に着目したのか。柿の枝先に大きな柿の実がなり、それを目当てに二羽の目白がやってきた。目白はとりあえず柿の実をにらんで、さてどのように料理するか、思案しているように見える。渋柿だったら、いきなりかじりつくと、ひどい目にあわぬとも限らない。

背景のうち中央部分を明るくし、周囲を濃くしているのは、観る者の視線を目白に向けるための工夫だろう。






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