子どもの貧困

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この一・二年の間に、貧困な子どもを対象に食事サービスを実施する施設が増えているようだ。2013年に貧困児童対策の法律(子どもの貧困対策法)が施行されたのがその背景にあるとも指摘されている。実際、2013年には21しかなかったものが、今では300を超えているという。そういう施設は無論あった方がいいが、決して十分とはいえない。毎日サービスを実施しているのは少数だし、絶対数もまだまだ足りない。

日本の17歳以下の貧困児童の数は、いまや350万人に上るという。これは同年代の児童総数の16.7パーセントに当たるという。アメリカのそれは17.3%だから、それよりはましだと言えなくもないが、問題なのはアメリカが減少傾向の結果この数字になっているのに対して、日本の場合には増加傾向の結果こうなったことだ。問題を放置しておくと、今後貧困児童の割合は更に高まるかもしれぬ。

貧困の定義は色々あるが、この数字はOECDのそれを前提にしたものだ。OECDは、平均所得の半分以下の所得水準にある世帯を貧困世帯としている。これだと、相対的な貧困ということになるが、古典的な意味での絶対的な貧困が増えているのが最近の特徴だという。絶対的な貧困に陥ると、親は子どもにろくに食べさせてやれなくなる。その結果腹を減らしたまま寝なければならない子どもが増えているという。子どもを対象とした食事サービスは、そうした子どもたちにとって最後の命綱の役割を果たしているのだろう。

こういう現状に対して、政府や自治体の反応は鈍い。一応子どもの貧困対策についての法律は作ったものの、財政的・制度的な裏付けはほとんど進んでいない。その背景には、自立・自存が当たり前だとする考え方が、行政の現場でも根強いことが上げられる。貧困の当事者も、他人様の助け(行政を含めての)を求めるのは恥ずかしいという気持が強く働き、全体として子どもの貧困対策に前向きに取り組もうという体制になっていないというのが、今の日本の現状である。

だが、少子高齢化の社会を迎え、将来の日本を担うべき子どもを、社会全体で育んで行かなければならない趨勢の中で、いつまでもこんなことが続いていては、日本という国の将来は危ういというべきである。





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