トランプはアメリカ政治界のゲンゴロー:ジョージ・ウィルの辛口批評

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保守派の論客で、辛口批評で知られるジョージ・ウィルが、Japan Times に寄せた文章の中で、トランプを評して「アメリカ政治界のゲンゴロー」と言った。ゲンゴローというのは、甲虫の体を起用に動かして水の上を移動しているが、それは無心に動いているから浮いていられるのであって、俺はどうして浮いているんだろうなどと考えはじめたら、沈んでしまう。それと同じように、トランプも何も考えずに生きている。考えることは自分にとって得策でないと、本能的にわかっているからだ、というのである。

トランプが選挙期間中に発信してきた言葉は、選挙向けのキャンペーンであって、大統領ともなればさすがに現実路線に戻るだろうと希望的観測を述べる人たちもいるが、そうした希望は打ち破られるだろう。なぜならトランプには、自分の発言の政治的影響を、まじめに考えようとする姿勢はないからだ。だから、トランプが選挙期間中に言ってきたことは、大部分がそのまま実行されるだろうし、また、選挙期間中の言い分と異なることをやり始めたからといって、そのことについての論理的整合性を取り繕うとすることもないだろう。

選挙中のトランプは、アメリカの対外関与に消極的な印象を振りまいてきた。それ故、トランプをヒラリーよりも平和愛好的と受け止めた有権者も多かったと思われる。ところがゴールドマン・サックスのCEOから国務長官に起用したティラーソンは、中国の南シナ海での動きをけん制して、軍事衝突も辞さないという姿勢を打ち出している。ウィルは、ティラーソンは中国との戦争を始める可能性が大きい、と憂慮しているようだ。

そのティラーソンを、トランプは制御する姿勢を見せていない。場合によっては中国と軍事衝突してもよいと考えているのかもしれない。なにもかも、その時の空気次第で柔軟に対処するのがベターなのだ。そこに政策の一貫性は求めない。一貫性を求め出したら、それなりに頭を使わねばならない。頭を使うことほど、トランプが嫌いなことはない、と言うわけだろうか。

(参考)Trump is the water beetle of American politics By George Will




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 トランプとはいかなる人物かと考えていたのだが、ジョージ・ウイル氏の批評で納得した。アメリカが長い選挙戦で選んだ人物であるから、敬意を持って考えなければと思ったのだが・・・
 民主主義の理念は消えさり、知は後退し、文明は破壊の方へ向かうのだろうか。
 トランプのツィッターで囁かれると、企業のトップは慌てふためき、トランプに迎合している。また、トランプに米国内の雇用を増やす、投資を増やすと言って擦り寄る経営者がでてきた。ビジネスの駆け引きが政治を支配し始めた。
 あらゆる価値基準は損得によって決められることになるのだろうか。それも近視眼的な損得であるように思われる。
 民主主義、資本主義、グローバリズムの終焉がひたひたと迫ってきている。次の新しい秩序を模索するための過渡期か、ファシズムが跳梁跋扈したあの前夜なのか、世界を導く羅針盤はどちらへ向けているのだるか。
 2017/1/20 服部

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