Smile now, cry later:安倍総理の対ロシア外交

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Smile now, cry laterとは、多少の意訳をすると、「あとで吠え面をかくな」ということだ。先日の安倍・プーチン会談の成果を皮肉っている。この会談で、安倍総理はプーチンにさんざんコケにされたうえ(安倍を長時間待たしたことや安倍からのプレゼントの申し入れを拒否したことなど)、肝心な北方領土問題に関しては、1956年の日ソ共同宣言以前の状態に戻ってしまった。誰が見ても安倍総理は全面敗北したわけだが、本人は機嫌よく笑って見せた(写真はAPから)。それを、今は笑っていられるが、後で吠え面をかくな、と警告しているわけだ。

警告しているのは、直近のJapan Times に載った記事だ。(Why Abe's Russian gambit is doomed By Jeff Kingston)この記事は、安倍総理が、ロシアに対するG7諸国の結束を乱してまでプーチンに誠意を尽くしたにかかわらず、プーチンによって散々コケにされたのは、安倍晋三の外交能力に問題があるからだ、というように言っている。

安倍晋三はプーチンのことが全く理解できていないので、自分の直面している問題を正しく認識できない。その結果、プーチンによっていいようにあしらわれてしまうのだ、と鋭い批判をしている。安倍が唯一成果として強調した共同経済開発についても、ロシア側は北方領土で経済活動する日本企業に対して必ず課税権を行使するだろう(実行するか猶予するかは別にして)。それを認めることは、北方諸島がロシアの主権下にあるということを、日本自ら公式に認めることになる。そうなれば返還交渉など論外だということになる。そんなことをわかっていながら安倍は共同開発に取り組むつもりなのか。もしそうなら安倍は相当のお人よしということになる。そんな趣旨の事も言っている。

お人よしと言う点では、共同記者会見で見せた安倍のプーチンへの気遣いは噴飯ものだったと言っている。この会見では当然、クリミアとかウクライナの問題が話題になるところだったが、プーチンにとって都合の悪いそうした質問は一切しないように、安倍とその側近たちがメディアをコントロールしたと言って、報道の自由についての安倍政権の姿勢にも強い批判を加えている。

この記事がここまで安倍晋三に厳しいのは、記者が欧米の立場に立っているからだろう。G7では、一致結束して対ロシア制裁をしようとしているのに、安倍晋三だけがプーチンに融和的な姿勢をとっている。プーチンはこれを、G7の結束を崩すことに利用できたとほくそえんでいるに違いない。

安倍晋三は、見込みのないことをあてにしてプーチンに擦り寄るのではなく、G7の一員として、もっとプーチンに対して毅然とすべきである、と言いたいのだろう。筆者はこの記事のスタンスに全面的に同意するものではないが、安倍晋三のあぶなっかしさについての指摘には同意できるものがある。





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