トランプのオバマケア廃止・置換えが頓挫

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トランプが公約の最重要政策に掲げていたオバマケアの廃止とその代替策への置換えが頓挫した。理由はトランプが与党の共和党をまとめきれなかったことだ。共和党内には、オバマケアの完全廃止と代替案の不要を主張するリバタリアンたちの勢力と、完全廃止によって5000万人以上の無保険者が出ることに批判的な穏健派があって、党としての一体化が図れなかったのである。

トランプは、オバマケアのうちでも、たとえば病歴を理由に保険への加入を断れない仕組みなど、そのよいところは残す形で法案化を進めたところ、これにリバタリアンが反発、完全廃止を求めた。これに対してトランプが譲歩して、オバマケアのよいところも削って法案化したところ、今度は穏健派が反対し、党として態度を一本化することができなかった。

トランプとしては、自分の意地にかかわることでもあり、自ら乗り出して党内の説得にかかったが、結局説得しきれずに、旗印を下したということらしい。その説得の仕方がいかにもトランプらしい。俺の言うことを聞くか、それとも言うことを聞かないか、いますぐどちらかにしろ、というものだ。要するにビジネスでの恫喝的交渉術を政治の場に持ち込んだわけだ。

今回の事態について、アメリカの大手メディアの中には、トランプの求心力の低下だとか、今後の政権運営への影響だとかを云々するものもあるが、筆者のような非アメリカ人にとっては、これはアメリカ政治のいいところが作用した結果だとの印象を受ける。

トランプが政権に就いて以来、その唯我独尊ぶりが目立ち、アメリカはもしかしたら21世紀型ファシズムに向かって進んで行くのではないかとの懸念も感じたのだったが、イスラム諸国からの入国禁止措置への裁判所によるブレーキといい、今回の動きといい、トランプの独裁に対するチェック機能がまだ働いている。そしてそれはアメリカや世界にとって、好ましいことだ。そう思わずにはいられない。

やはりアメリカには、建国以来の自由主義の建前が21世紀の今日でも生き残っていて、トランプといえども、それを一日にして覆すことはできないということを、今回の事態は知らしめたということだろう。またそうあって欲しいものだ。






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