勝手に逃げたやつが悪いのか? 福島自主避難者をめぐる復興相発言

| コメント(0)
福島原発事故時の自主避難者について、彼らが故郷に帰らないのは自己判断・自己責任だ、と現職の復興相が言ったそうだ。これは、自主避難者に対する住宅支援の打ち切りについて、政府としては除染が住んだ地域には戻ってほしい、戻らないのは、その人の勝手であって、そこまで責任を負うつもりはないということを言いたかったらしいが、記者会見の席上、売り言葉に買い言葉のようなやり取りがあって、その挙句激昂して質問者を罵倒したことで、ちょっとした騒ぎになってしまったようだ。

復興相の本音は、避難指示を受けて避難した人と、自主的に判断して避難した人とをある程度区別し、指示に従った人については指示を出したものとして一定の責任をとるが、自分で判断した人にまで、同じような責任を取るつもりはないということらしい。

これは、理屈が通っているようで、実はそうも言えないところがある。この理屈だと、災害のひどさは脇へ置かれ、政府の言うことに従った人と、自分の判断で「勝手に」行動した人との差別ということに問題が矮小化されてしまう。こういう風に言うと、国民はどんな危機に直面しても、政府の言うとおりに行動すればよいのであって、それを自分勝手に行動した場合には、その結果については自分で責任をとれ、と言っているに等しい。

政府にこう言われて、普通の人は納得できるだろうか。身の危険が迫っているのに、自分の判断を放棄して政府の指示を待ってから行動するのが正しいと言われているようものだが、たしかに政府が迅速で正しい指示をしてくれれば、政府の言い分にも幾分かの理屈はある。だが、福島のあの事故が起きた時、政府は迅速で正しい行動をとっただろうか。決してそうではあるまい、というのが大方の国民の印象だろう。

この復興大臣の頭の中には根強い愚民意識があるのだとしか思えない。国民はいつでもお上の言いなりになっていればよいのであって、かりそめにもお上を出し抜くようなことはけしからぬことだと思い知るべきである。お上の言うとおりにしていれば、お上はそれなりの面倒を見てもやろう。自分で勝手に行動した輩は、お上をないがしろにしたのだから、その結果の責任は自分で取れ、勝手に逃げたやつが悪いのだ、お上としてはそういう輩を相手にするつもりはない。どうもそう言っているように伝わって来る。





コメントする

アーカイブ