恵可断臂図:雪舟

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「恵可断臂図」は、禅僧であった雪舟の所謂禅画の代表的なものである。禅宗の開祖たる達磨と、その後継者恵可の劇的な出会いを描いている。達磨は、少林寺で面壁七年の修行を行っていたが、そこへ恵可が訪れて入門を乞うた。達磨がなかなか入門を許さなかったので、恵可はその決意を示す為に、雪の中に立ちながら、自分の左腕を切り落として見せた。それを見た達磨が、恵可の決意を評価して入門を許した、という逸話にもとづいている。

絵は、岸壁に向かって正座黙考する達磨と、その後ろに立って、いままさに左腕を切り落としたばかりの恵可を描いている。二人の表情には、驚いたりうろたえたりするといったところはない。なにごともないかのように、端然としてすわり、また立っている。人物の無表情に対応するかのように、岸壁も平板で無表情である。

人物は、単純な線によってざっくりと表現され、岸壁のほうはかなり微細に描かれているが、雪舟の特徴である空間の奥行きは感じられない。禅画に相応しく、精神性を強調していると思われる。

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これは、達磨の表情を拡大したもの。横顔に見開いた眼が、まるで生きているように見える。

なお、「四明天童第一座雪舟年七十七歳謹図之」の款記がある。(紙本淡彩 199.9×113.6cm 京都国立博物館)






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