半身達磨(五):白隠の禅画

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静岡県の永明寺に伝わる半身達磨像。白隠四十歳代の作品と推測されている。晩年の達磨像とは明らかに異なった特徴が認められる。だが、ふっくらとしたその表情は、やはり白隠の自画像だと考えられる。

晩年の達磨像とは異なり、この達磨は僧衣に身をくるんでいる。頭巾をかぶり、上衣を太い線で表現しているが、これは後年の白隠像の魁となるものだろう。この時期の達磨像には、上衣をきちんと表現したものもある。

薄墨のドライタッチで眉毛や髭を描いた後で、小さな点で黒目を表現しているところは、四十歳代の達磨像に多く見られる。歯をむき出しているところも共通する点だが、これは自身が出っ歯だったことを、自嘲気味に表現しているのだろうか。

左上に見える賛は、白隠の弟子峨山慈棹が後に書き加えたもの。その上部にあったと推測される白隠自身の賛は、なんらかの理由で切り取られてしまったと思われる。

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これは、顔の部分を拡大したもの。画面全体が大きい上に、顔がその画面いっぱいに描かれているので、対面するとかなりの迫力を感じるはずだ。

(紙本墨画 175.0×131.5cm 静岡、永明寺蔵)






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