スカラムッチの率直な下劣さ

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大物の評判を伴って鳴り物入りでホワイトハウス入りしたスカラムッチが、さっそく物議を醸している。それを見ると、大物という感じは伝わってこない。むしろどこにでもいるチンピラを思わせる。もっともそのチンピラぶりが、彼のボスであるトランプの悪党ぶりと釣りあって見えるから、今のアメリカがいかにすさまじい状況になっているか、わかろうというものだ。

物議の発端は、スカラムッチが雑誌ニューヨーカーのライアン・リッツァと交わした会話にある。この会話の中でスカラムッチは、自分の政敵であると彼が考えているラインス・プリーバスを何とかして懲らしめてやろうと思い、その材料をリッツァの口から吐き出させようとしたというのである。

スカラムッチがそんなことを思い立ったのは、リッツァが書いた記事に、ショーン・ハニティ(右派コメンテーター)やビル・シャイン(FOX前会長)とともに彼がトランプと夕食を共にしたとあったことに目を留めたからだ。彼は、これはうちわの会食であり、少数の人間にしか事実は知らされていない。その少数の人間の中にはプリーバスも含まれているはずだから、この情報源はプリーバスに違いない。スカラムッチにとっては、こうした情報をプレスに流すのは重大な犯罪である。だからそれを犯したのがプリーバスだとすれば、彼は重罪人として訴追されるべきである、ということになる。

そこでスカラムッチは、情報源は誰かと執拗にリッツァに聞いたのだが、リッツァは当然のことながら情報源を明かさなかった。そのことに腹を立てたスカラムッチは、それならいっそホワイトハウスの情報スタッフを一人残らずクビにしてやると喚いたそうだ。その喚き声の中には、聞くに堪えない言葉も多々混じっていたというので、それが物議を醸しているというわけである。

その聞くに堪えない下劣な言葉とは、たとえば次のようなものである。
"Reince is a fucking paranoid schizophrenic, a paranoiac," 
"I'm not Steve Bannon, I'm not trying to suck my own cock," 
"This is going to get cleaned up very shortly, O.K.? Because I nailed these guys. I've got digital fingerprints on everything they've done through the F.B.I. and the fucking Department of Justice."

スカラムッチが何故これほどプリーバスに敵愾心を燃やすのか。その背景を知らねば彼の言い分の異常性が理解できないだろう。彼が言及しているリークとは、重罪どころか他愛ない事実だ。それを根拠に相手を法的・政治的に懲らしめようというのは、あり得ない話だし、その異常さは個人的な因縁によるのでなければ、説明できない。

スカラムッチは早くからトランプ政権入りを狙っていたと言われる。その条件として、利益相反の恐れがある自分の事業を売却したほどだ。ところがプリーバスの強い反対で政権入りすることができなかった。政権入りを果たしたいまこそ、プリーバスに対する恨みを晴らす時だ。どうもそうスカラムッチは考えているようなのだ。もしそうだとすれば、唇寒い茶番というほかはない。

スカラムッチとはかねて肌合いがあわなかったスパイサーが、スカラムッチと同僚になるのを嫌って報道官をやめたことは周知のことだ。こんなヤツと付き合っていたら、どんな災厄に見舞われるか知れたものではないと恐れたからだろうと言われている。スパイサーといえば、オルタナ・ファクトを連発してホワイトハウスの信用を損なった人物だ。そんな男にも嫌われるとあっては、スカラムッチはそれなりの大物とはいえそうだ。すくなくとも率直な男として評価されてしかるべきだろう。やることに裏表がないから。動機は単純。世界を判断する基準は、自分にとって役に立つかどうかだ。また、自分にとって敵か味方かで人を判断している。率直である証拠だ。






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