俊乗上人坐像:運慶と鎌倉彫刻

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俊乗上人重源は、治承の兵火で焼けた東大寺の復興に奔走した人である。かの西行も、重源に協力して、奥州の藤原氏に砂金の勧進を行ったことが知られている。重源の努力が実って、東大寺は速やかに復興できた。その復興に、運慶をはじめ慶派が総力をあげてかかわった。

この像は、重源が87歳で没した直後に、供養のために作られたと思われる。猫背の姿勢で座り、両手で数珠をまさぐりながら、口を固く閉じて前方を見つめている。右目は左目よりやや小さい。これらは重源晩年の風貌を忠実に伝えているといわれる。

作者の特定はできていないが、運慶の周辺にいた仏師の作だろうと推測される。運慶その人がかかわっていた可能性もある。衣文の表現などに運慶の特徴がよく伺えるからだ。

檜材の寄木造り。頭部は前後矧木、体部は左右矧木。体内は深く刳りぬいて、黒漆塗りを施している。

(木造寄木造り彩色 像高82.5cm 東大寺俊乗堂)







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