源氏物語関屋図屏風:宗達の襖絵

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宗達の六曲一双の襖絵「源氏物語関屋澪標図屏風」は、「風神雷神図屏風」と並んで、宗達最高傑作との評価が高い。法橋宗達の落款があることから、寛永七年以降の、宗達の後期を代表する作品である。金地の上に、豪華絢爛たる世界を現出せしめている。

これは六曲一双のうちの右隻「関屋図」。宗達は、源氏物語の中から、関屋の巻と澪標の巻を取り出して絵画化した。両者の間には、何らのつながりもないが、関屋のほうが山、澪標のほうが海を背景にしているところから、宗達はそこに面白い対比を感じて、一双の屏風絵に仕立てたのだろう。

源氏物語は、古来多くの画家によって絵画化されてきたが、そのどれもが屋内の光景を描いていた。宗達のこの屏風絵のように、屋外の光景を絵画化したものは、珍しいと言われている。

関屋の巻では、光源氏が石山寺に参詣する様子が書かれているが、その際に、逢坂山の関で、昔の愛人空蝉に逢う。宗達のこの絵は、その際の様子を絵画化したものだ。右手の牛車には光源氏が乗っている。左手端にわずかにのぞいている牛車には空蝉が乗っている。原作では、美しい紅葉を背景に供奉の人たちのにぎやかさが強調されているが、この絵では、緑色の山を背景に、わずかな数の人が描かれて、すっきりした画面になっている。

背景の緑色の山が、山の形としてはアブノーマルだが、これは左隻澪標図の海の表現を考慮して、思い切り単純化したためだと思われる。

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これは、光源氏の乗った牛車の部分を拡大したもの。牛の前に立ちはだかるのは空蝉の弟右衛門佐、その牛をなだめようとして、何人かの男たちが手綱を引き絞っている。

(紙本金地着色 152.2×355.6㎝ 静嘉堂文庫 国宝)






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