新たな核軍拡競争:プーチンとトランプ

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大統領選を直近に控えたプーチンが、自国民と世界向けの演説を行い、その中で軍事力の強化を訴えた。その主な内容は、欧米のディフェンス・システムを突破する能力を持つ核弾道ミサイルの開発に注力するというものだ。このミサイルはアメリカからの迎撃をかわして、世界中の標的を確実に攻撃できる。また、ロシアに対しては無論、ロシアの同盟国への攻撃には、ロシアは断固として反撃する。世界中の国々、とくにアメリカはロシアのこの決意を厳粛に受けとめた方が良い。プーチンはそう言って、ロシアの軍事力の充実を誇った。

一方アメリカのトランプは、あらたな核開発戦略を立て、その中で小型核弾道ミサイルの充実を計画している。アメリカは通常兵器によるアメリカとその同盟国への攻撃に対して、この小型核弾道ミサイルを用いて反撃すると表明している。あるいはこの小型核弾道で先制攻撃する可能性も示唆している。

これらは、米ロ間を中心とした従来の核軍縮の枠組みが崩れて、新たな核軍拡競争の時代がやってきたことを思わせる。米ロ両国がこの調子で核開発を加速させれば、世界は新たな核の脅威に直面するようになるだろう。核兵器の開発が加速され、それが実践に用いられる可能性が高まれば、核兵器の攻撃に対する反撃能力の増大を目指すと言った具合に、核開発競争はスパイラル的に加速するだろう。

米ロが核軍縮の枠組みを作って来たのは、核開発競争によって共倒れになることを避けようとしたからだ。それが改めて核開発競争に戻ることは、共倒れになる前に相手を壊滅させることができると勘違いしているからではないか。自分のほうは安全な状態にあって、相手だけを一方的に殲滅できるという保証がなければ、核攻撃を仕掛けようとは、誰も思わないはずだ。ところがトランプにはそう思っているフシがある。これは世界にとっては非常にやっかいなことだ。

翻って日本の立場に立てば、この事態はどう見るべきなのだろう。安倍政権はトランプの尻馬にのって、トランプのなさることは何もかも正しい、といったようなスタンスを取っている。トランプが、たとえば北朝鮮を核攻撃したら日本にどのような影響が及ぶか、そんなことは一切考えていないようである。彼らには不都合なことは考えないという習性があるためだ。しかし国民としては、為政者がそんな態度では困るというものだろう。実際にとばっちりを食って殺されるのは国民なのだから。

プーチンがこの問題にこだわっているのは、ヨーロッパの前線地域にNATOのミサイル防衛システムが配備され、また日本にもイージス・ショアが配備されることを意識してのことだ。つまりロシアは軍事的に東西から封じ込められているという被害感情をもっているわけだ。安倍政権は一時期プーチンとの間に良好な関係を築き、それを梃にして北方領土問題の解決を図ろうとしたようだが、いまやそれは幻想に終わり、日ロは厳しい対立関係に戻りつつある。





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