蛙の放下師:暁斎の動物戯画

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河鍋暁斎は、「風流蛙大合戦之図」をはじめとして多くの蛙の絵を描いている。すでに三歳にして蛙を写生したと伝えられる。蛙がよほど好きだったのだろう。その生き生きとしたところは、鳥羽僧正の蛙たちと双璧をなすと言ってよい。写実的な蛙もあれば、擬人化されたユーモラスな蛙もある。といった具合で、蛙の姿を千差万別に描き分けている。

「蛙の放下師」と題するこの絵は、文字通り曲芸をする蛙を描いている。扇子をもった大きな蛙が、蓮の茎を口にくわえてバランスをとっている。茎の先端に開いている蓮の実の上には三味線らしきものを持った蛙がもって、音頭をとっている。足元にも太鼓を叩きながら音頭をとっている蛙がいる。一方、茎の中ほどには一匹の蛙が先端を目指して登っているところである。

この絵で何を表現したかったのか。よくはわからないが、とくにそんなことは考える必要がないのかもしれない。曲芸する蛙たちを純粋な気持ちで鑑賞すればそれでいいとも言えよう。

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これは曲芸をする蛙の部分を拡大したもの。蓮の茎をくわえてまっすぐに立ち上げ、両手両足でバランスをとっているところがよくわかる。右下の陰影に「筆峰之日本」とあるのは、ほかには見当たらないようだから、この作品のために特別に作ったものだろう。

(明治四年ころ 紙本墨画淡彩 132.6×45.6㎝ ゴールドマン・コレクション)






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