横たわる美人と猫:河鍋暁斎の美人画

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これは、蛙ならぬ猫を眺め入っている美人を描いた一枚。美人は横たわって、両肘をついて顎を支えた姿勢で無心に猫の姿に見入っている。猫のほうは人に見られているのが気にならぬようで、何事もないようにうずくまっている。もっとも美人のように寝そべっているわけではないので、多少の緊張は感じているのかもしれぬ。

構図としては、右手に蚊帳があるおかげで、その手前の方から蚊帳越しに美人を眺めているような感じが伝わってくる。その蚊帳の端のほうと、場面の上部になにかの葉っぱがのぞいているが、これは構図を引き締めるための暁斎流の仕掛けだ。しかしそれを除くと、無地の空間が広がっているばかりなので、全体としてはのんびりとした印象を受ける絵だ。

浴衣を無造作に着て、白く覗いた膝のあたりに赤い腰巻を露出させているところは、「美人観蛙戯図」同様、暁斎の遊び心だろう。

(明治四年ころ 絹本着色 56.0×98.3㎝ 河鍋暁斎記念美術館)






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