ひまわり:炎の画家ゴッホ

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ゴッホにはひまわりの連作があるが、そのほとんどは1888年の夏に描かれたものだ。ゴッホはこれらひまわりの絵で黄色い家の部屋を飾り、ゴーギャンを迎えようと考えたのだ。

上の絵は、ゴッホが耳切り事件を起こして入院したあと、退院を許された時に、描いたものである。1889年1月のことだ。その季節には無論ひまわりは咲いていない。ゴッホはすでに描いていたひまわりの絵をコピーするような形で、この絵を描いたのだ。

もとになった絵は、現在ロンドンのナショナル・ギャラリーにある。両者を見比べると、全く同じ構図で、まさにコピーと言ってよい。だが、コピーだからといって、絵の価値が下がるわけではない。実際、ロンドンのものよりこの絵の方が、色彩的には豊かなものを感じさせて、上等の出来栄えになっている。

ロンドンの絵もそうだったが、ゴッホはこのひまわりの絵を、黄色をベースにして描いた。背景になる壁は寒色系のレモン・イエローで、前景のテーブルは暖色系のイェロー・オーカー。それにひまわりの花の色は、黄色にレッドを混ぜ、葉っぱの色は黄色に青を混ぜている。全体が黄色をベースにしながらも、多彩な色彩配置になっている。

ロンドンの絵が、黄色と青だけで描かれているのに比べると、この絵には暖色の赤が加わっているだけ、多彩な感じを与える。そこがこの絵の優れたところだ。

(1889年1月 カンバスに油彩 95×73㎝ アムステルダム、ゴッホ美術館)






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