天照皇大神(大日本史略図会):月岡芳年の歴史画

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「大日本史略図会」は、「大日本名将鑑」とほぼ同じ時期に刊行されたシリーズで、皇祖天照大神のほか歴代天皇をテーマにしている。

これは天照大神をテーマにしたもの。とはいっても天照大神自身を描いたわけではない。天の岩戸伝説の一節をイメージ化したものだ。

天照大神が素戔嗚尊の所行に怒って天野岩戸に閉じこもってしまうと、世界が暗黒になってしまった。そこで困った神々は天照大神の関心を引こうとして、岩戸の前で歌や踊りを催す。そのなかでも天鈿女命の踊りは実に愉快なものだったので、大神が興味を抱いて岩戸に近づいたところ、天田力男命がすかさず岩戸を開け、大神を広場に連れ出したという話がよく知られている。

この絵は、その話をイメージ化したもの。中央に天鈿女命の踊る様子が描かれ、左側に天田力男命が岩戸をこじ開けるところが描かれている。岩戸の隙間から日の光が漏れているが、天照大神の姿は見えない。

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これは、天鈿女命の部分を拡大したもの。天鈿女命は神話では胸をはだけて踊ったことになっているが、この絵では着衣のまま、神を振り乱してなにやらまじないの文句を唱えているようにみえる。

(明治十二年<1869> 大判三枚続)






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