義経記五條橋之図:月岡芳年の武者絵

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義経(牛若丸)と弁慶が五条橋で出会う場面は、古来日本人の心を捉え続けてきた。その様子は義経記に原点があるが、能の橋弁慶をはじめさまざまな語り物を通じて人口に膾炙した。月岡芳年はこのモチーフを、単発の錦絵で表現して見せた。

絵は、五條橋の上で、牛若丸が飛び上がって弁慶に扇を投げつけると、弁慶がそれを長刀の柄で受け止める場面を描いている。飛び上がった牛若丸の表情と、長刀を構えた弁慶の表情とが、背後の月の光に照らされるようにして浮かび上がる。

構図に工夫が見られる。視点を低くして、二人の動きをダイナミックに捉えている。中央部中程に月を配することで、二人の人物との間で三角形が形作られ、構図が安定するとともに、そこに動きを感じさせる処などは、老練なテクニックである。

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これは牛若丸の部分を拡大したもの。下から見上げるような構図なので、下駄の底が見えたりして、ダイナミックが動きを醸し出している。

(明治十四年<1881> 大判三枚続)




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