
上杉輝虎(謙信)は、天文二十一年(1552)に弾正少弼の官名を賜った。二十二歳の年である。武田信玄との川中島の戦いを始めたのは、その翌年のことだ。この絵は、その際の謙信の勇姿を描いたものとされる。この時謙信は単身信玄の本陣にせまり、敵ながらあっぱれとたたえられた。
絵は白い練り絹で頭を包んだ謙信が、馬を駆って敵陣に乗り込む様子を描いている。右手で剣を持った謙信は何故か横を向いているが、馬のほうはまっすぐ前を向き、今にも敵陣に突入せんとする勢いを示している。
煙塵をもうもうと立てながら駆ける馬の姿は、あたかも画面から飛び出しそうな躍動を感じさせる。
(明治十六年<1883> 大判錦絵)
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月岡芳年
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