露西亜四方山紀行その五:ロシアン・フォークショー

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(プーシキン美術館)

三時過ぎイタリア・レストランを出でて先程来たれる道を戻り、プーシキン美術館に入る。あたかも日本の浮世絵点開催せられてあり。その様子を石子ニュースにて知り是非見物致したしと言ふなり。

館内に入りてすぐの大広間沿ひに浮世絵やら襖絵など展示せられてあり。多くは無名の絵師になるものなれど、北斎、歌麿、写楽の作品数点のほか、尾形光琳による宗達風神・雷神像の模写図あり。また渡辺崋山の肖像画もあり。ロシア人見物客多数熱心に覗き込みてあり。かかるわけを以て、プーシキン美術館自慢のコレクションは見ずしてやむ。

館を辞して後、ビブリオチェーカ駅より地下鉄を乗り継ぎてドストエフスカヤ駅に至る。例のスーパーマーケットにて水など買ひ求めてホテルに戻る。

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(ルスカヤ・ピェースニャ劇場)

七時近くホテルを出で、五分ほど歩みたるところなる劇場ルスカヤ・ピエースニャに赴く。これは露西亜の伝統芸能用に作られたる国立劇場にて、大劇団コストロマの本拠なり。今宵はこの劇団によるフォークショー催されたり。二千人ほどの収容能力を持つ座席は開演時にはほぼ満員となれり。

ショーはロシア風の踊りと歌をアレンジせる愉快な見世物なり。数十人のロシア人男女舞台狭しと踊りまはり、見物人をして飽かしむることなし。その様子を見るに、男たちはコサックダンスをもとにせる激しい動きの踊りを披露し、女たちはエクゾチックかつ優雅な踊りを披露す。とくに上半身を静止したるまま動き回るところは、あたかも氷上を滑るが如くに見えたり。

単に俳優らが演技するにとどまらず、観客も興に乗るや手拍子を以て参加す。余もその熱気に感染して思はず手を叩きたるほどなり。最初の心つもりにては、インターバルを以て退場するつもりなりしが、あまりの面白さに最後まで見続けたり。その甲斐あってか、フィナーレには異常なる熱気を感じたり。余もまた拍手を以てその熱気を楽しみたり。

終演後歩みてホテルに戻り、ホテル内のカフェにて晩餐をなさんとす。しかるに食事は出さずといふ。致し方なく例のスーパーマーケットに赴き、缶ビールやらファーストフードを買ひ求め、それらを我が部屋に持ち込みて、手ごしらへの晩餐をなす。

卓上、余は今宵のパフォーマンスに大いに共感の意を示す。いはく、ロシアに来てはコサックダンスを見ざるべからず、今宵のコサックダンスは傑物なりと。浦・岩両子は余と感激を共にす。石子はさにはあらず。やや苦言を呈す。踊子の踊り方が画一的にて、あたかも北朝鮮の組体操を想起せしむるがその理由なりといふなり。意外の受け止め方といふべし。さはともあれ、実にロシアらしきパフォーマンスとはいへるなり。欲をいへば、露西亜民謡も併せて聞きたかりし。

十二時前には解散して各々の部屋に散ず。余は疲労の甚だしきを覚えたれば、シャワーを浴びてすぐにベッドにもぐりこみたり。






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