露西亜四方山紀行その十二:バレー見物

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(アレクサンドリンスキー劇場)

再び舟に乗ること三十数分にしてサンクト・ペチェルブルグに戻る。宮殿前広場を横切る際、ロシア娘より声をかけらる。翁らはキタイなりや、妾と記念撮影をなさざるや、と。余、苦笑して去る。また、驢馬の縫ぐるみを着て通行人をたぶらかし、ともに記念撮影をなして、肖像権料をとるものもあり。つられて付き合ふは剣呑に似たり。

街中で出で、ネフスキー大通りを散策す。サンクト・ペチェルブルグの目抜き通りにて、威風壮大なる建物櫛比す。その様は、見方を変へればこけおどしともいひつべし。ロマノフ王朝の権威を人民に示さんとしてかかる外見を整えたるとも見ゆればなり。

カザフ大聖堂はこの目抜き通りのシンボルなり。ヴァチカン宮殿に似たる作りなり。その先、川を渡りところに低層ながら広壮なる建物あり。すなわちスヴニール市場なり。ここにて家人への土産に青いサラファンを買ひ求めたり。

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(エカチェリーナ像)

今夜はバレー見物をなす心積りなり。会場のアレクサンドリンスキー劇場は、市場より数歩先なる公園の奥にあり。公園の中心に一の巨像立ちたり。すなはちエカチェリーナ女帝の記念像なり。

開演にはしばしあればとて、付近にて夕餉をなさんとす。浦子一の中華料理店に入るべしといふ。余是非なく賛成す。ロシア料理には食傷したればなり。すなはち赴きて中華料理数皿とビールを注文す。しかるにその実中華料理とは大違ひなり。見た目も中華風にはあらずロシア風なり、味も雑駁にして美ならず。かかるものを中華料理と名づけて人に供するは詐欺といふべし。されど店内には料理を楽しむロシア人の姿多し。かれらには中華料理もなにも区別なきが如し。

この店のトイレは男女共用なり。余、ロシア娘の尻の後に従ひて順番を待つ。ロシア娘屈託することなし。ロシア人は尻を並べて排便する習慣ありといふ。されば男女が便所を共用するも不自然にはあらざるが如し。

食後アレクサンドリンスキー劇場に至り、バレー白鳥の湖を見る。なかなか面白かりき。なほこの劇場は十八世紀のなかばに建てられたる由にて、頗る風情を感ず。余らは三階のバルコニー席より観覧す。

劇場を辞して後ネフスキー通りを歩み、とあるスーパーマーケットに入る。ヲートカと水、チーズなどを買ひ求む。今晩の慰みに供さんとなり。プロスペクト駅より地下鉄に乗り、センナヤ広場駅に下車してホテルに戻る。途中道を見失ふこと二三度なり。

ホテルに戻るに昨夜とは異なるフロント嬢なり。今宵のフロント嬢はきはめて無愛想にて、こちらの問ひかけにもまともに答へんとせず。石子などはやや立腹の体なり。

銘々しばし寛ぎたる後、裏子の部屋に集まり、先ほど買ひ求めしヲートカを飲む。なかなかうまし。またチーズの味も美なりき。






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