バーニー・サンダース大いに語る

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雑誌「世界」の最近号(2019年2月号)に、バーニー・サンダースが昨年九月にある大学で行った演説が紹介されている。バーニー・サンダースといえば、前回の米大統領選で、民主党候補の座をヒラリー・クリントンと争った人物だ。社会主義者を標榜しており、その主張はかなり急進的だとの評判だが、この演説を読む限り、あたり前のことを言っているように聞こえる。

「独裁と権威主義に立ち向かう世界的民主運動を構築する」と題されたこの演説は、現在世界的な規模であらわれている独裁政治と権威主義を厳しく批判し、民主主義を機能させるために、世界中の人々が団結しなければならないと訴えたものだ。サンダースが独裁と権威主義の例としてあげているのは、プーチンのほかに、ハンガリーのオルバン、トルコのエルドアン、フィリピンのドゥテルテ、北朝鮮の金正恩、それにブラジルのボルソナロやサウジアラビアの王室といった具合だが、それらの政権がいまや我が物顔に闊歩して、真の民主主義を踏みにじっているというのである。

始末が悪いことに、アメリカのトランプ大統領が、こうした独裁者を励ましている。サウジアラビアは、アメリカの顔色をうかがう必要がなくなったことをいいことに、イエメン国を徹底的に破壊しているし、イスラエルのネタニヤフは、トランプに励まされてイスラエルの非ユダヤ系市民を迫害している。

トランプ政権はいまや、世界じゅうの独裁者や権威主義的政治家の希望の星になっているかの観がある。トランプ政権のドイツ駐在大使は、ヨーロッパ各地の右翼過激派に対するトランプ政権の支持を表明する始末だし、この政権は、「我が国の長年の同盟国の民主的基盤を脅かす勢力の側に大っぴらに味方している」というのだ。

そのトランプ自身は、不法な手段で富を手に入れたばかりか、「大統領として前例のない方法で、自分や取り巻き連中の経済的な利害を政府の政策のなかにとりこんでいる」。そんなトランプに対して、パワフルな特別利益団体が、自分たちの身勝手な利益のために政府への支配力を強められるよう、露骨に働きかけている。このままでは、世界じゅうがトランプのような人間によって、自分の利益を追求するための道具に貶められてしまう。

こういう動きに対してサンダースが提案するのは、世界中の人々が連帯して臨むということだ。それには、たんに現状を維持するという発想ではだめだ。もっと積極的に打って出なければならない。サンダースが提案するのは、「世界中の政府を支援して、富裕層や多国籍企業が公正な税金を回避するためにオフショア銀行口座に21兆ドル以上もの金額を隠しておきながら、自分たちの労働者の家族には緊縮経済政策を押し付けるように政府に要求するという、とてつもない不条理を終わらせること」だという。

こういうサンダースの主張を聞くと、至極当たり前のことを言っているように聞こえる。それを過激な主張だと受け取るのは、トランプやその同類とあまり違わない感性をもっているからではないか。





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