永観堂として知られる京都禅林寺に伝わる波濤図は、もともと仏間の南北両側面の襖に描かれていたが、後に掛幅に改装された。古くは狩野元信作といわれたが、特徴的な岩の描き方からして、長谷川等伯作と認められた。
渦巻く海の水面から顔を出した岩を描いている。岩の描き方には、圭角を強調するなど、等伯独特の技法を見せている。この渦為す海が鳴門を想起させることから、阿波鳴門図の異称がある。
一応金地墨画であるが、素地の水墨画の上から、金箔押しの雲形を貼り付けている。金箔を押したのは、室内画としての装飾性に配慮したものであろう。(紙本金地墨画 各185.0×140.5cm 禅林院 重文)
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