松に叭々鳥図:海北友松

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京都建仁寺の塔頭禅居庵に、松竹梅を描いた襖十二面がある。松竹梅のそれぞれを四面づつの画面に描き分けたものだ。そのうちの四面がこの「松に叭々鳥図」。松をメーンにして、それに叭々鳥を点景として加えている。

一見して大胆な構図である。松の巨幹とその上部から伸びた枝が左右に広がり、霞の中から浮かび上がって見える。霞の切れ目から現われたかのように、二羽の叭々鳥が幹にとまった姿で見える。叭々鳥は色は黒いがムクドリの仲間である。

全体的に余白が多いのは、それで春霞を表現しているのだろう。画面のほぼ三分の一が余白だし、まだ右から二番目の襖もほとんどが余白である。しかし余白の多さは画面を弛緩させる効果には結びついていない。むしろ霞から浮かび上がった松の存在感を高める効果につながっている。海北は、余白を上手に使っているのである。

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これは、松の巨幹とそこにとまった叭々鳥の部分を拡大したもの。松の幹は大部分が霞の陰にかくれている。その霞も、ただの余白ではなく、松を隠すほどの勢いを感じさせ、この絵の真のテーマであるかのような存在感を主張しているようだ。

(紙本墨画 襖四面 建仁寺禅居庵 重文)







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