ルネサンス美術

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ルネサンスは14世紀のイタリアに始まった文化現象を現わす言葉で、フランスの歴史家ミシュレが一時代を象徴する言葉として用いたのが始まりだ。その後、有名な歴史家ブルグハルトが、「イタリア・ルネサンスの文化」を著し、ルネサンスの概念を普及させた。日本では文芸復興と訳されることが多いが、文芸の分野にとどまらず、文化のあらゆる領域にまたがるものである。美術の分野も例外ではない。むしろ美術の分野こそルネサンス文化の華といってよい。

美術の分野でのルネサンスは15世紀に全盛を迎えた。その後、十六世紀になると、フランスや北欧にも伝播していき、全ヨーロッパ的な現象となった。また、宗教改革とも結びつき、ヨーロッパは中世から近世へと向かって急展開していくのである。このサイトでは、そんなルネサンス文化のうちで、イタリア・ルネサンスに焦点をあてて、その歴史的な発展過程と、代表的な作品を鑑賞していきたい。

ルネサンス美術を論じる場合には、その全体を四つに時代区分するのが普通である。15世紀前半の初期ルネサンス、15世紀後半の盛期ルネサンス、16世紀以降の後期ルネサンスとわけるほかに、その前段階としての前期ルネサンスを付け加え、四つに時代区分するわけである。

前期ルネサンス美術の代表はジョッド・ディ・ボンドーネである。かれは14世紀の初期にフィレンツェで活躍した画家で、中世美術を受け継ぐ一方で、生き生きとした人間表現やテーマの現実性など、ギリシャ・ローマ美術を参考にしながら、ルネサンスを先導するような役割を果たした。しかし、その運動は広範なものになることはなく、ルネサンス美術が本格化するのは、更に一世紀を経てからであった。

初期ルネサンス美術は15世紀初期に花開くと、あっという間に広がっていった。この時代を代表する芸術家は、建築家のブルネレスキ、彫刻家のドナテッロ、画家のマザッチオである。彼らの芸術には、古代ローマ・ギリシャ芸術の影響が色濃く見られ、遠近法による空間表現、写実的でダイナミックな人物表現など、ルネサンス美術の特徴といわれるものを体現していた。

盛期ルネサンス美術は15世紀後半から16世紀前半にかけて花開き、数多くの巨人的な芸術家を生んだ。この時代を代表する芸術家は、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ・ブオナロッティ、ラファエロ・サンティの三人である。かれらはフィレンツェやローマを拠点に活躍したが、そのほかヴェネツィアにはティツィアーノが現れ、その後のヴェネツィア派の美術をリードした。スペインで活躍したエル・グレコは、ヴェネツィアで修業したのである。

後期ルネサンス美術は、マニエリズムの時代ともいわれ、風変わりなフォルムを追求する芸術家が現れた。この時代を代表するのは、ティントレットやアルチンボルドである。

このサイトでは別途、ダ・ヴィンチの絵画とミケランジェロの壁画を取り上げているので、その部分は、重複を避けた。





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