フィリッポ・ブルネレスキ:ルネサンス美術

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フィリッポ・ブルネレスキ(1377-1446)は、ジョットより一世紀のちに活躍した芸術家であり、ジョットをルネサンスの先駆者とすれば、ルネサンス芸術の本格化を告げる人というべきである。初期ルネサンスの最初のランナーと位置付けられる。彼の業績は、主として建築の分野で成果を上げたのであるが、その活動の初期には、絵画や彫刻の分野でもめざましい業績をあげた。彼の影響は、絵画においてはマザッチョを通じて、彫刻の分野ではドナテルロを通じて、後世に伝えられた。

今日に伝わるブルネレスキの業績のうち、彫刻に関してのものは、フィレンツェのサン・ジョヴァンニ洗礼堂の北側扉を飾る装飾がある。これは、1401年に、新世紀の始まりのイベントとして、毛織物業社組合が催したコンクールに応募したもので、テーマは「イサクの犠牲」であった。これに七人の彫刻家が応募したのだが、そのうちブルネレスキとギベルティの二人が最終選考に残った。審査員は、この二人に甲乙をつけることが出来ずに、引き分けとしたうえで、両者が共同で装飾の作業にあたるように説得したが、ブルネレスキはそれを辞退して、優勝と仕事の受注をギベルティに譲ったといわれる。

上の映像は、そのコンクールに出展された「イサクの犠牲」の彫刻作品である。ギベルティの作品が、優雅な装飾性にこだわっているのに対して、ブルネレスキのこの作品は、リアリティを重視している。かれはそのリアリティを表現するために、現実の人間をモデルにした。また像の配置も、構図のなかに具合よく抑えるのではなく、構図からはみ出させることで、人物の動きをリアルに表現している。

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これは「十字架上のキリスト」。1410年頃の作品で、フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂のために作った。これもまた実在の人物をモデルにしたといわれ、手足に浮かび上がる血管や、肋骨などが、現実の人間を彷彿させる。

ブルネレスキは、人生の後半には主に建築家として活動した。代表作は、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラである。





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