マサッチオ:ルネサンス美術

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マサッチオ(Masaccio 1401-1428)は、ロレンツォ・モナコらのゴシックの雰囲気を残した装飾的な画風が流行っていた15世紀初期のフィレンツェにあって、ブルネレスキから受け継いだリアルな表現に拘った画家だ。画家生命は非常に短かったが、後世に大きな影響を及ぼした。

その影響とは、人物を始めとしたモチーフをリアルに表現することであり、そのための技術として、一点透視法とか遠近法を確立したことだった。

人物のリアルさということについては、上の作品「玉座の聖母」を、同じモチーフのロレンツォ・モナコの作品と比較すると一目瞭然である。聖母子の表情や仕草は、現実の人間のように描かれている。モナコに比べると非常にリアルな表現だといえる。(1426年 135.5×73㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)

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これは、「聖三位一体」と題する壁画。キリストの足元の床の一点を中心とした一点透視画法によって描かれている。この画法によって、画面に奥行きが生まれ、見る者の視線を奥へといざなってゆく。そのことで見る者は、そこに現実の人間が存在するかのような錯覚を受ける。(1427年 667×317㎝ フィレンツェ、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂)

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これは、「貢ぎの銭」と題する壁画。この作品には、遠近法とともに、光源の統一という技法が採用されている。絵を見ると、人物や建物の影が、右から左へと同じ方向にさしているのがわかる。ということは、光源が右側にあるということである。この壁画が描かれた壁面は、右側に窓があってそこから光がさしているので、この絵の中の影は、現実の光源にも一致していることになり、見る者はあたかも、これらの影が現実の光に応じているように思える。そこにマサッチオは、この作品のリアルさをさらに高めようとの意図を込めたと考えられる。(1425年頃 255×598㎝ フィレンツェ、サンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂)

なお、マサッチオは不格好という意味のあだ名で、本名はトマーゾ・ディ・セル・ジョヴァンニ・ディ・モーネ・カッサーイという。






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