わたしのグランパ:東陽一

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東陽一の2003年の映画「わたしのグランパ」は、筒井康隆の同名の小説を映画化したもの。思春期の少女と、その祖父の交流を描いている。祖父は13年ぶりに刑務所から娑婆に出て来たことになっている。その祖父が、いじめられている孫を励ましたり、不良少年たちを更生させたり、悪人たちと戦う姿を、少女は見ながら、次第に強い人間に成長していく過程を描いている。そんな少女が成長した姿を見送るように、祖父は最後に死んでしまう。それも川でおぼれた小さな女の子を救った後で、自分自身が溺れてしまうのだ。そんな祖父の死にざまを、孫の少女は自殺願望の実現だったのではないかと解釈する。

菅原文太演じる祖父が、なかなか見せる。この祖父は、腕っぷしは強いようだが、なにしろかなりの年寄りだ。そんな年寄りが、不良どもやヤクザを相手に立ちまわる姿が描かれるわけだが、そんな年寄りを菅原文太が演じると、見ている方としては、不思議に安心した気分でいられる。菅原文太のことだから、観客をがっかりさせるようなことはないはずだ。そんな思いを抱かせるからだろう。

この祖父が刑務所に入ったのは、やくざとの闘いで、二人も殺したからだ。そのやくざは、祖父の親友の家に火をつけて、焼き殺したのであったが、それに怒った祖父が、単身やくざの組に殴り込みをかけて、二人も殺したというわけなのだった。そのやくざはまだ健在で、刑務所から出て来た祖父に近づいてくる。彼らの狙いは金だ。祖父は彼らを騙して二億円もの金を奪っていたのだった。それを取り返そうと、やくざは孫娘を誘拐し、身代金代わりに金の返済をせまる。それに対して祖父のほうでも、相手のボスの娘を誘拐し、人質を交換する形で孫娘を取り返すのだ。

そんな具合で、筋書きとしては、平凡な娯楽作品とあまり異ならないが、なにしろ菅原文太がスーパー老人を演じているので、観客としては、その活躍ぶりを見るだけで、気分がスカッとする。この映画はだから、菅原文太の魅力を伝えるために作られたようなものだ。

孫娘を演じた石原さとみが、なかなかいい雰囲気だ。最初のほうでは、学校でのいじめにいじけている様子だったが、祖父の行動を見ているうちに次第に誇りを持つようになり、その誇りを自信に変えていく。自信を持った少女は、やくざたちに誘拐されても、見苦しく騒いだりはしない。自分の躰に触ろうとするすけべやくざに、キンつきを食らわせる余裕だ。手足をしばられた状態で、パンツの中に手を入れられても、見苦しい騒ぎぶりは見せないのだ。

その少女が、座っている椅子ごと空中に浮かんだりするシーンが出て来るが、これは原作者である筒井康隆のSF趣味のあらわれだろう。





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