ティツィアーノ・ヴェチェッリオ:ルネサンス美術

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio 1488/90-1576)は、ヴェネツィア派最高の画家である。ルネサンス美術は、フィレンツェで始まり、ローマを経てヴェネツィアに中心地が移っていったのだが、ティツィアーノはそのヴェネツィアの美術を一躍最高レベルまで高めたのだった。ティツィアーノの画風の特徴は、華麗な色彩感覚にあり、以後のヨーロッパ絵画に多大の影響を及ぼした。長命だったこともあり、膨大な作品を残している。

ヴェネツィア共和国領内のピエーヴェ・ディ・カドーレで生まれ、十二歳の時に画家の修行のため弟のフランチェスコとともにヴェネツィアの叔父のもとに送られた。絵の修行はベッリーニのもとで行った。兄弟子にジョルジョーネがいる。フランチェスコも名の知れた画家になった。

活動の初期にはジョルジョーネとの共同作品が多かった。従来ジョルジョーノの作品と言われてきて、ティツィアーノの作だと変ったものが結構ある。豊かな色彩と、世俗的なモチーフは、初期から晩年まで一貫している。

比較的若い時期の代表作として知られているのは、「聖母被昇天」。サンタ・マリア・グロリオーザ・ディ・フラーリ聖堂の祭壇画として、二年の歳月をかけて、1517年に完成した。三層構造になっており、中層の聖母は天井を見つめ、その視線の先に神を配している。また、地上には聖母の焦点を見上げる群衆が描かれているが、その描写にはダイナミックな動きを感じ取ることができる。また、色彩も非常に鮮やかだ。こうした特徴は、そのままヴェネツィア派の特徴とされたものである。(1517年 板に油彩 690×360㎝ ヴェネツィア、サンタ・マリア・グロリオーザ・ディ・フラーリ聖堂)

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これは、「ウルビーノのヴィーナス」。兄弟子ジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」を模倣したものだが、一層官能的な雰囲気に仕上げている。その官能性を際立たせるためか、貞節を象徴する犬は眠り込んでその役割を放棄している。ヴィーナスの挑発的な表情は物議をかもし、これは美の神ではなく売春婦だと罵るものも多くいた。(1538年頃 板に油彩 119×165㎝ フィレンツェ、ウフィチ美術館)

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これは、「ダナエ」。ティツィアーノはダナエをモチーフにした絵を多数描いている。この絵の中のダナエは裸体をさらし、下腹部に手をあてているが、ダナエに衣をかぶせたり、老婆の代わりにクピドを配したヴァージョンもある。

この作品をティツィアーノはスペイン王フェリペ二世の注文を受けて描いた。そのため今でもスペインにある。この卑猥さを感じさせるダナエの絵を、スペイン王が喜んだかどうか。ミケランジェロはこの絵の色彩感は褒めたというが、デッサン力には疑問を呈したということだ。(1554年 板に油彩 129×180㎝ マドリード、プラド美術館)







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