日本の法典にも強姦という言葉はあった?

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日本では、いわゆる強姦事件が無罪になるケースが多い。多いどころか、ほとんどが無罪になる。それを見こんで始めから告訴をあきらめる被害女性も多い。そんなところから、日本は強姦天国と言われることもある。そんな例は日常的に見せられているところだが、このたび、民事事件とはいえ、強姦が裁判所で認定され、加害者に賠償命令が出されるという事例があった。この判決は、今後の日本における強姦事件への向かい方に多少なりとも影響するのではないか、そう思わされる部分もある。もっともこの判決は、強姦という言葉は使っていない。「合意のない性行為」という言葉を使っている。

訴えたのは元ジャーナリスト志望の伊藤詩織さん。訴えられたのは元TBS記者の山口某。この事案は、刑事裁判では結局不起訴ということになった。そもそも裁判にもならなかったわけだ。それについては、この国がいかに強姦に寛容な社会であるか、あらためて人々に知らしめた。それに対して、強姦された伊藤さんのほうは、これでは引き下がれないと考えて、民事裁判に訴えた。その結果、彼女の主張が認められて、強姦すなわち「合意のない性行為」が認定され、加害者への損害賠償命令ということになったわけだ。

これに対して山口某は、全面的に争う姿勢を崩していない。ただちに控訴手続きをするそうだ。その言い分を聞くに、「自分は法に触れる行為は一切していない」と主張している。その一方で、伊藤さんと性行為した事実は認めている。ということは、自分が伊藤さんとした性行為は、法に触れたものではないという主張をしていることになる。自分が伊藤さんとした性行為は、「合意のない性行為」ではなく、合意にもとづいた性行為だったと主張しているわけだ。

一方、伊藤さんのほうは、合意すなわち同意したことはなく、むりやり性行為をされたと主張している。このように両者の主張が正面から食い違う場合には、被害者の言い分のほうを重視するのが常識的なのではないか。頭を殴っておいて、相手が殴ってほしそうだったから殴ってやったというのは通らない言い分だ。その言い分だけを根拠に山口某は自分のした行為の正統性を主張しているわけである。

最近では、痴漢の認定では、被害者の言い分が尊重されるようになってきている。だが強姦事犯についてはあいかわらず、被害女性の訴えは軽視され続けている。今回だって、民事でこそ伊藤さんの主張は認められたが、刑事では門前払いを食らわされたわけだ。日本の司法はまだまだ問題だらけといわねばなるまい。ともあれ、強姦事案でこのような判決が出たことは、一歩前進というべきだろう。日本の法典にも、強姦という言葉が生きていたということだ。





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