トランプによる中東和平案のいかがわしさ

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トランプがパレスチナ問題に関する中東和平案を発表した。発表の場にはイスラエルのネタニアフが同席したが、パレスチナ側は不在だった。その事態が象徴しているように、この和平案なるものは、イスラエルの言い分を一方的に聞いたようなもので、パレスチナ側は全面拒否の姿勢を見せている。たしかに、パレスチナ側の反発は理解できる。この案は、イスラエルによるこれまでの不法な入植をすべて認め、また、エルサレムを全面的にイスラエルに帰属させるなど、イスラエルの無法な占領にお墨付きを与える一方、パレスチナ側には「テロ(抵抗行為のこと)」の自重を促すものだ。要するに、パレスチナはこれまでに積み上げられて来た現実(無法なものだが)をすべて受け入れよと迫るものだ。

問題はそれを第三国のアメリカ(実質的にはトランプ)が要求していることだ。アメリカはこれまで、中東問題については中立な第三者としての立場から、イスラエルとパレスチナ及びアラブ諸国との仲介に努めてきた。ところがトランプは、そうしたアメリカの中立主義をかなぐり捨てて、全面的にイスラエル側の立場に立ったうえで、イスラエルに一方的に有利な条件を全て飲めと迫っているわけだ。これでは全く話にならないと、パレスチナ側が反発するのは当然のことだ。

こんな無理筋の案を今回なぜトランプは出したのか。事情通の間では、米国内世論向けのジェスチャーだとする見方が流通している。弾劾裁判とその先の大統領再選を控えて、トランプは窮地に立っている。その窮地を打開する方便としてこの問題を持ち出した可能性が高いというわけだ。ネタニアフも汚職の嫌疑で起訴されたりして、国内の政治基盤が揺らいでいる。そこで国内のユダヤ人の支持を強めるためにこれを利用したのだろう。二人とも、この案の実現性は全く期待していない。自分たちの政治基盤が強まれば目的は達成される、と踏んでいるに違いない。

そんな具合で、この和平案なるものはかなりないかがわしさを感じさせる。和平の最低条件は、イスラエルが1967年以前の国境線を認めることだ。これでもパレスチナ側には不満がある。だが両者とも不満が残らないような妥協案はない。イスラエルは国際法違反の無法な占領をやめ、パレスチナ側はイスラエルの生存権を認める。これしか実現可能な解決策はないと知るべきである。このままでは、イスラエルは無法国家でありつづけるし、国際社会はトランプという政治家の私的な(いかがわしい)欲望に振る舞わされることになる。





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