浴女たち:ルノワールの世界

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アングルに学ぼうとしてルノワールは、アングルがもっとも得意とした裸婦像に取り組むようになった。晩年のルノワールの傑作は、大部分が裸婦を描いたものである。その最初の傑作が、「浴女(Les grandes baigneuses)」である。この大作をルノワールは、1885年に取り掛かってから、ほぼ2年かけて完成させた。完成させた作品は、ジョルジュ・プティの画廊で催された「国際絵画彫刻展」に出品した。プティは、ルノワールの保護者だったデュラン・リュエルのライバルの画商だった。

この作品は、アングルへのオマージュといわれるように、アングルの影響が強い。輪郭は明瞭だし、色彩には光沢がある。こうした特徴はアングルを真似たもので、それまでの、つまりイタリア旅行以前の、ルノワールにはなかったものだ。

しかしこの大作を、世間はあまり高く評価しなかった。すでに印象派の新しい画風に慣れていた世間にとって、これは古臭い昔の画風を思わせたからだろう。友人のピサロでさえ、この作品は線にこだわるあまり、人物がバラバラになり、調和を乱していると批判した。

ピサロはこんなふうに言うが、この作品をよく見れば、構図も安定しているし、色彩も豊かである。この作品のために、ルノワールとしてはめずらしく、膨大なスケッチ類を始めとして、丹念な準備をしている。ルノワールはもともと、野外で自然の光に囲まれながら描くのが好きだったが、この作品は、ほとんどアトリエで描かれた。以後ルノワールは、アトリエで描くことが多くなる。

(1887年 カンバスに油彩 118×170㎝ フィラデルフィア美術館)







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