墨田河舟遊:鏑木清方

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文展へは毎年出展し、三回目以降は入選するようにもなった。清方は、文展をめざして大作を描くうちに、次第に挿絵画家から本物の画家になっていったという自覚を持ったという。実際、年を追って画風が変り、本格的な日本画家へと成長していったようだ。

「墨田河舟遊」と題したこの絵は、八回目の文展に出展したもので、六曲一双の大作である。この形式の作品は、第四回の文展に出展した「女歌舞伎」があるが、この「墨田河舟遊」は、六曲一双の表現様式を十分に発揮したものだ。とはいえ、伝統的な意味での六曲一双の様式とは、いささかずれたところがある。というのも、左右両隻の図柄が連続していて、あたかも一枚の巨大な絵を、二つに切り分けたように見えるからだ。

モチーフの舟遊は、自分が住んでいた浜町河岸からの眺めだそうだ。清方はよく浜町河岸から、隅田川を行きかう舟を眺めていた。その眺めを、屏風絵のモチーフに取り上げたわけである。右隻には、人形劇を演じて興がる人々の姿が、左隻には、その船の一部と、別の船が描かれている。

上は右隻。中央に、人形を操る女性の姿が、屋形船の屋根には釣竿を伸ばす二人の子どもが描かれていて、のんびりとした雰囲気がつたわってくる。女たちはともかく、子どもが髷を結っているのがおもしろい。

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これは左隻。大きな屋形船のまわりに小舟が描かれている。清方は、こちらのほうが気に入っていると書いている。

(1914年 絹本着色六曲一双 各166×362㎝ 東京国立近代美術館)






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