夏の女客:鏑木清方

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「夏の女客」は昭和八年(1933)の尚美会に出展されたもので、題名通り、客間に通された女性の客を描いている。女性は団扇をもって座布団の上にかしこまり、主人の出て来るのを待っているようである。その表情は緊張を感じさせ、用向きになにか重要なことがあるのかと思わせる。

夏のこととて、女性は涼しげな着物を着ている。この着物があるおかげで、この絵は、夏の暑苦しさを感じさせない。女性の持っている団扇も涼しさを想起させる。もっともそれを持っているだけで煽いでいないのは、主人が近づく気配を感じたからか。

女性の手前にある座布団は、主人のために用意されたものだろう。その上にも団扇が置かれている。

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これは女性の表情を拡大したもの。目をきりりとあけ、頬のあたりは紅潮している。なにかを思い詰めている気配である。こういう心理状況をうかがわせるところは、清方の人物画の長所であろう。

(1933年 絹本着色 130×42㎝ 茨城県近代美術館)






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