請地秋葉の境内、木母寺内川御前栽畑:広重の名所江戸百景

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(91景 請地秋葉の境内)

請地とは本所の北側に広がる一帯の地名。いまでいう墨田区の向島あたりだ。その向島四丁目に秋葉神社がある。遠州の秋葉大権現を勧請したもので、火よけの神として尊崇された。特に大名火消の点から、大名の庇護を受けたという。

神社の境内には、築山や池を配した庭園が設けられ、江戸の諸民の憩いの場になっていた。また池のほとりには、参詣客をあてこんだ料理屋が数件立ち並んでいたという。

この絵は、庭園のたたずまいを描いたもの。左手前は料理屋の一部だろう。そこから客が池のほうを眺めている。池の周囲には赤く色づいた木が見える。こうした眺めは、いまでは見られなくなった。

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(92景 木母寺内川御前栽畑)

木母寺は梅若伝説で有名な寺である。木母とは梅の偏と旁をばらしたものだ。京都からさらわれてきた梅若という子供が、このあたりで客死し、それを憐れんだ人々が隅田川のほとりに塚をつくって悼んだ。それを梅若塚といい、その塚を守るものとして木母寺が建てられたと伝えられている。

寺のある場所は、いまでは白髭東防災拠点の中にある。徳川時代には、寺の北側に内川という水路があって、そこに橋がかかっていた。この水路は、いまの鐘ヶ淵通りにあたる。

この絵は、隅田川のほうから内川を眺めた構図。内川の岸辺は畑になっていて、そこで野菜が作られていた。この畑は幕府御用向きだったので、御前栽畑と呼ばれた。






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