家の鍵:父と子の触れ合いを描く

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ジャンニ・アメリオの2004年の映画「家の鍵(Le chiavi di casa)」は、父とその障害を持った子との触れ合いをテーマにした作品。父子関係の意味とともに、障害を持った子どもの生きる意味のようなことを考えさせる映画である。

主人公の父親は、15年前に別れた息子と会うことになる。息子は障害を持っていて、その治療やリハビリのためにベルリンの病院に行くことになったが、ついては実の父親としてそれに付き添い、子どもの励みになるべきだと里親から説得されて、始めはいやいやながら、付き添うことになったのである。

夜行列車でベルリンについた二人は、早速病院に向う。父親ははじめ息子にどう接したらよいかとまどう。息子のほうも、障害のためもあって、なかなか父親と馴染めない。だがしばらく共同生活をしているうちに次第に心が通うようになる。その過程を淡々と描いたといったような映画である。

父親がなぜ息子と別れたか、その事情は次第に明らかにされる。父親は病院で、同じように障害を持った娘を持つ母親と懇意になり、彼女と色々話すうちに、障害を持った子どもを持つ意味とか、自分がその子どもを捨てた事情とかについて反省するようになるのだが、その過程で、自分の身勝手から子どもを捨てたと言うのである。だが今は、子どものために出来ることをしたいと考えるようになっている。

しかし障害を持った子の世話をするのは大変なことだ。母親のほうは、自分の娘が死んでくれたらと考えたこともあると言う。子自身に責任があるわけではないが、そんな子を持った親の気持もわからないではない。そんなふうな雰囲気が伝わってくるように作られている。

父親は子どものために尽くす準備が次第に出来てくるが、子どものほうではまだ、かつて自分を捨てた父親を心から受け入れる気持にならない。そこで色々とわがままを言って父親を困らせ、父親の本心を試そうともする。映画のラストシーンは、その試しあいの場面で、そこでお互いに本心をぶつけ合った父子が、互いに心から受け入れあうということになっている。

こんな具合に、人間の生きる意味を考えさせるシリアスな作品である。






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