無頼といわれ、狂人と呼ばれた蕭白が、狂女を描いた作品がこの「美人図」。この女が狂っていることは、うつろな目、手紙を銜えた口、泥だらけの素足などから読み取れる。
手紙のことから、謡曲「藍染川」と結びつける見方もあるが、やや強引というべきだろう。藍染川の女は、子どもを連れて筑紫の大宰府までゆき、子の父でありわが夫である神官に会おうとするのだが、拒絶されて絶望し、川に身を投げるという内容だ。この絵には子どもが出て来ないし、また人妻というよりは、未婚の女の印象である。
もっとも腹をふくらませて描くことで、子どもの存在を暗示しているとか、みなりから身分の高さを表現しているという解説もありそうである。
いずれにして、恋にやぶれた女の狂気を描いているとはいえそうである。
(製作年不明 絹本着色 107.1×39.4cm 奈良県立美術館)
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