シアター・プノンペン:カンボジア映画

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2014年のカンボジア映画「シアター・プノンペン」は、クメール・ルージュによる大虐殺がカンボジア国民の心に残した傷をテーマにした作品。1970年代半ばに生じたこの大量虐殺によって、カンボジア国民の四人に一人が殺されたとされる。当然、生き残った国民には深い心の傷を残したはずで、この映画はそれをとりあげた。結構大きな反響を呼んだ。

やや不良ぎみの女子大学生ソポンが主人公である。大学近くにある映画館に入り込んだソポンは、昔製作されたある映画の主演女優が自分の母親であることを知り、母親のことを深く知りたいと思うようになる。その映画は途中で終わっていて、結末がどうなるのかわからない。そこで彼女は、結末部分を撮り直して、映画を完成形にしたいと思う。映画館の主人をプロデューサーにして、大学の講師の協力を得ながら、映画を再現していく作業をするのである。

その過程で、映画館の主人と母親との間に、恋をめぐるさやあてがあったことが次第に明らかになる。母親には恋人がいたのだったが、その恋人の弟が映画館の主人なのだった。彼は母親に横恋慕して、自分の兄をクメール・ルージュに売ったことで、その兄である恋人は殺され、母親も収容所に入れられる。そんな母親を今の父親が救い出したのだった。父親はクメール・ルージュの一員だったのだ。

そんな筋書きの映画である。結局映画が完成し、その映画を見ながら、いったんは崩壊するかに見えたソポンの家族は和解し、恋人の弟も過去のいきさつを清算した思いになれたというような結末になっている。

映画の流れを通じて、たえずクメール・ルージュ時代が思い起こされるという設定になっている。だが、それを単に否定するだけではなく、その意味を考えながら、国民の間のわだかまりを乗り越えて、和解することの必要性を訴えたいというのが、この映画に込められたメッセージのようである。

こんな具合に、メッセージ性の強い作品であり、映画としての出来栄えは、あまり重視されていないようだ。





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