古仏龕図:富岡鉄斎の世界

| コメント(0)
tetu1918.2.kobutu.jpg

「古仏龕図」と題するこの作品は、大阪の古書籍商鹿田松雲堂の十三回忌法要のために製作したもの。法要に相応しく、古仏をモチーフにしている。古仏とはさとりを開いたもののことで、死者にはもっとも望まれるところ。これを贈られて心から喜んだに違いない。

一番手前が布袋、その後が維摩居士とダルマ、更に後が観音の二つの化身、最後尾が阿弥陀如来である。布袋を古仏に加えているのは、鉄斎の愛嬌だろう。

画面に付属して両脇に紙が張られており、それには「求仏求仙全妄想、無憂無慮即修行」の対句が記されている。元の石屋清供禅師の山居詩の一節である。我々凡人でも、生まれながらに仏性をそなえているので、無駄な修行をするのはやめて、おおらかにしていなさい、というような意味である。

龕の周辺部は墨で真っ黒に塗りつぶされており、その暗い背景から古仏たちが浮かび上がってくる。暗黒との強烈な対比があるおかげで、古仏たちはあやしい存在感を発揮している。

(1918年 紙本着色 133.4×45.7cmの一部) 





コメントする

アーカイブ