虎に襲われる斥候たち:アンリ・ルソーの世界

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アンリ・ルソーは、その短い晩年に熱帯の異国風景を好んでモチーフに選んだ。「虎に襲われた斥候たち」は、その先駆的な作品で、1904年に描かれている。それ以前の1891年に、「不意打ち」(別名「熱帯嵐の中の虎」)を描いているが、それから長らく経過した後で、このモチーフにもどっていったわけである。

タイトルにあるとおり、熱帯のジャングルの中で虎に襲われる斥候たちを描いている。一人は虎の一撃をうけて地面に横たわり、いまにも食われそうである。もうひとりは馬にのって、槍を虎に向けている。虎は、その槍には気を使わず、倒れた男を食うつもりのようである。

ジャングルの密林の描き方に、ルソーらしい工夫が見える。背景を暗い色で描き、前景を明るい色で描くことで、ルソーなりの遠近感を演出しているが、前後関係は見とれても、奥行きは感じさせない。また、背景の密林を暗く塗りつぶすのではなく、空の明るさを取り入れるところは、ルソーの特徴と言える。

馬の描き方には、ルソー一流の稚拙さが感じられるが、虎の方はリアルに描かれている。

(1904年 カンバスに油彩 121.6×161.9㎝ バーンズ・コレクション)





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