T-34 レジェンド・オヴ・ウォー:アレクセイ・シドロフ

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2019年のロシア映画「T-34 レジェンド・オヴ・ウォー」は、独ソ戦の一齣を描いたもの。ロシア映画であるから、ロシア人の兵士がドイツ軍を相手に勇敢に戦うところを描く。だからロシア人にとっては愛国映画であるし、場合によっては戦意高揚映画にもなる。21世紀の今になって、こういう映画がロシアで作られたわけは何か。いささか時代錯誤を感じさせられるが、今のロシアはある種の孤立状態に陥っており、世界を相手に戦っているといえなくもない。そうした時代閉塞の状況が、このような戦争映画への需要を生んだといえなくもない。

独ソ戦のさなか、ある戦線のソ連軍はドイツ軍の攻勢をかわして退却することになり、ある戦車部隊がそのしんがりを努めて後方錯乱作戦を命じられる。戦車部隊といっても、たった一台で大勢のドイツ軍部隊に立ち向かおうというのだ。ところがソ連の戦車T-34はすぐれもので、たった一台ながら、ドイツ戦車数台以上に匹敵する能力を持っている。そのすぐれた能力を発揮して、ドイツ軍を撹乱、ソ連軍の目的は一応達せられたようだが、戦車部隊は敵の捕虜になってしまう。

時間は流れて1944年。ソ連軍はドイツ軍に対して攻勢に転じる。ドイツ軍はソ連軍と戦うにあたって、ソ連戦車T-34の性能を精査したいと考える。そこで捕獲した戦車T-34を、ソ連軍の戦車部隊あがりの捕虜に操作させて、戦闘訓練を行う。その訓練に、かつてたった一台のT-34でドイツ軍を撹乱した戦車部隊のメンバーが携わることになる。かれらの相手となるドイツ側将校は、嘗て彼らが戦った相手の将校である。

T-34は武力を持たないという条件だったが、メンバーらは智慧を働かせて一定の武力を用意する。迫撃弾六発のほか、いくばくかの火力だ。その武力を用いて敵の戦車を破壊し、ドイツ陣を突破して、チェコスロバキア方面に逃亡を図る。映画は、その戦いと逃亡の様子を、緊迫感を以て描くのである。

独ソ戦におけるソ連兵の戦いぶりは、実際にはあまり褒められたものではなかった。連戦連敗で大勢のソ連兵がドイツ軍に殺された。それでも中には勇敢なソ連兵がいて、ドイツ軍を破った例もあったのだ、ということをこの映画は訴えたいようである。

「太陽にやかれて」三部作を作ったニキータ・ミハルコフが製作陣の一員として参加している。監督したのはアレクセイ・シドロフ。ロシアでは空前のヒットを記録し、海外でも人気を集めた。日本でも大ヒットを記録したそうだ。





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