湘南風景:萬鉄五郎の風景画

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「湘南風景」と題されたこの絵は、冬枯れの自然をモチーフにしていることから、「窓」を描いた年の晩秋か初冬の景色なのだろう。松の葉を除いては、寒々しい冬枯れの眺めが広がっている。

おそらく、茅ケ崎の自宅の近所の風景であろう。この絵を描いたころに、長女のトミ子が結核で死んでいるのだが、この絵にはそうした悲しいできごとは、背景として感じられない。淡々と自然に向き合っているといった風情だ。

鉄五郎は、この絵を描いてから半年ほど後に、長女の死を追うようにして、自分も死んでいくのだが、そうした死の影も、この絵には見られない。

(1926年 カンバスに油彩 49.0×59.3㎝ 東京国立近代美術館)





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