
「窓」と題するこの作品は、茅ケ崎の自宅の窓から外を見た眺めだ。この頃、鉄五郎はまだ体調がよく、「水着姿」など数多くの制作を手掛けていた。これは、アトリエから眺めた庭の様子。もともと医者が診察室として使っていた部屋を、鉄五郎はアトリエとして使ったという。
画面手前の窓の手もたれに、浴衣のようなものが放り投げられているところから、おそらく夏の頃だと思う。窓の外側には葡萄棚のようなものがあって、繁茂した葉っぱの合間に葡萄の実がなっているのが見える。
庭の奥には、屋外用テーブルと簡易椅子のようなものが置かれている。家族でそのテーブルを囲んで、食事を楽しんだのかもしれない。
全体として明るい色彩感である。グリーンとオレンジの補色を組み合わせることで、強いインパクトをもたらしている。雑なブラッシングも印象的である。
(1926年 カンバスに油彩 72.7×53.4㎝ 岩手県立博物館)
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