希望のかなた:アキ・カウリスマキ

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アキ・カウリスマキの2017年の映画「希望のかなた」は、フィンランドにおける難民問題をテーマにした作品。それに一フィンランド人の生き方をからませている。その二つのテーマには、密接な関係はない。生き方を変えたフィンランド人がたまたま難民の男と出会い、その男との間に友情を築くということになっているが、なぜ、その二人が出会うことになったのか、そこにはたいした理由があるわけではない。

主人公は、シリアから逃げてきた男。フィンランド政府に難民申請をするが、長い間の手続きの結果申請は拒否され、男はシリアに強制送還されることになる。そこで男は、収容施設を脱出して街の中に隠れ場を求める。そうするうちに、一人のフィンランド人と出会い、かれとの間に友情をはぐくむというような内容である。

映画は、難民の受け入れに及び腰なフィンランド政府への批判的な視線と、フィンランド社会のもつ閉鎖的な体質への批判を感じさせる。とりわけ、ナネナチのような極右団体のメンバーが、執拗に難民を襲撃するところは、見ていて胸糞が悪くなるほどだ。こうした排外的振舞いは、日本でも在特会といった連中が同じようなことをやっているが、フィンランドでも盛んらしい。かれらはことさらに外国人排除を叫び、徒党を組んで外国人を襲撃したりするのである。フィンランドというと、なんとなく平和なイメージがあるが、じっさいにはこういう不寛容な面もあるということらしい。

ひとつ解せないのは、主人公の男が、長い間離れ離れになっていた妹と再会できた後で、その妹に難民申請を勧めることだ。自分自身は申請を拒否されているので、妹も拒否される可能性が高いことは認識しているはずだ。にもかかわらず、妹をわざわざフィンランドまで呼びよせ、難民申請をさせるとは、どういうことか、よく分からぬところがある。

なお、フィンランド人の男が経営に乗り出したレストランというのが、日本映画「かもめ食堂」に出てくるレストランと雰囲気が似ている。こういう小さなレストランが、フィンランドでは地元の人々に支持されているのであろう。





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