日中の駐英大使が誹謗合戦

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日中それぞれの駐英国大使が、英国の新聞紙上を舞台に誹謗中傷合戦を繰り広げたそうだ。毎日新聞によると、事の発端は、1月2日のデーリー・テレグラフに寄せられた中国大使の寄稿。この中で中国大使は、安倍首相による靖国参拝を批判し、「軍国主義が日本におけるヴォルデモート卿だとすれば、靖国神社は、(ヴォルデモート卿が自らの魂を保管する)魔法の箱であり、日本の魂の最も暗い部分を代表するものだ」と指摘。これに日本の駐英大使が反論し、6日付同紙上に「アジアのヴォルデモート卿になりかねない中国」と題した文章を寄稿し、中国側が挑発行為を繰り返していると指摘した上で、東アジアで軍拡競争を行い緊張を高めれば、ヴォルデモート卿の役割を演じることになると警告した。

こうした光景を見せられ、情けない気分になったのは筆者だけではないだろう。中国大使の無礼はさておいて、その無礼に同じような次元で反応するというのは、一流国の外交官とは言えない。相手が自分に宛てて放った暴言を、そのまま相手に返すのはスマートではない。スマートどころか、余りにもお粗末と言うべきで、犬の喧嘩でさえこんなに見苦しくはない。

相手が無礼な態度を取った時には、相手より一段高い次元から相手の非をたしなめるというのが紳士の流儀だ。それを相手と同じ次元で相手の非を並べ立てるのは、子どもでさえ不格好だと感じるようなやり方だ。こんなやりとりに現を抜かしているようでは、第三国の英国国民の眼には、どっちもどっちとうつるだけで、日本外交にとっては失点以外のなにものをももたらさない。

第一に、今回のやり取りでは、誰の目にも日本の方が分が悪く映ったに違いない。というのも、日本の方が中国よりも踏み込んで相手を侮辱しているということだ。中国側は日本の軍国主義をヴォルデモート卿に譬えているのに対して、日本側は中国という国そのものをヴォルデモート卿に譬えている。ちなみにヴォルデモート卿というのは、人気小説「ハリー・ポッター」シリーズに出てくる悪の権化で、小説の中でもその名が直接言及されることが憚られるほど、不吉な響きの言葉だ。その言葉を中国という国そのものに対して投げつけたわけだから、明らかに日本の大使は行き過ぎたことをしたわけである。

次に、日本の大使は中国側が一方的に挑発しているのであって、日本側は何も問題を起こしていないような言い方をしているが、こういう言い方は国際社会では通用しない。国際社会では、今回の日中対立のそもそもの発端は日本による尖閣国有化に中国が反応したというふうに考えているわけで、そういう事情を無視して、中国側が根拠もなく一方的に日本を非難しているといった言い方は、通用しない。そんなことは外交官なら当然わかることだろう。

それがこの日本大使には全くわかっていないらしい。日本国民としては実に嘆かわしいことだ。先日は、刑事訴訟手続きを巡る国際会議の席上、日本の遅れを指摘したアフリカの外交官に対して日本の外交官が「だまれ!」と一括して論議を呼んだことがあったが、その外交官と今回の駐英大使とは、国際感覚のないことでは甲乙つけがたい。日本国民としては、こんな連中に外交を託しているということに、もっと危機感を持つべきかもしれない。






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