憲法の条文より首相の言い分が優先する:安倍首相が重ねて立憲主義を否定

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安倍首相が国会論戦の場(衆議院の予算委員会)で、集団的自衛権の行使の容認について聞かれ、「(憲法解釈の)最高の責任者は私だ。政府答弁に私が責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける。審判を受けるのは内閣法制局長官ではない。私だ」と答弁した。これは、内閣法制局長官ではなく、首相こそが憲法解釈の責任をもっているのだ、ということを主張したかったようなのだが、実際には、違った風にうけとられた。選挙で勝ちさえすれば、いかようにも憲法解釈を変更できるというように受け取られた。与党の自民党でさえそう受け取ったものが多かったらしく、総務会では安倍首相を批判する意見が多数出たそうだ。

安倍首相は先日の国会答弁でも、立憲主義は過去の遺物だという旨の発言をしたばかりだ。だから今回の発言も、与党の議員にさえ、立憲主義を否定するようなものとして受けとられたわけだ。実際首相の判断で、憲法解釈がころころ変わるようでは、立憲主義も何もあったものではなくなるわけだから、このように受け取られたとしても、不思議ではない。

安倍首相はまた、自分が設置した安保法制懇にもふれ、その意見を踏まえて判断するのだと主張した。これは、自分の判断の正当性について強調したかったようなのだが、その法制懇のメンバーについては、「空疎な議論をされている方は排除している。現実的な状況、国際情勢について、しっかり議論される方、知見を持った方にしている」と説明した。つまり、自分と意見を同じくしている人だけで構成していることを認めたわけだ。

これでは安倍首相自らが、法制懇はアリバイ作りのための隠れ蓑だと認めたようなものではないか。

ともあれ、安倍さんは憲法解釈の変更に前のめりになるあまり、大局が見えなくなっているのではないか。もしそうではなく、わざとこんなことをしているとしたら、問題は複雑な様相を呈する。憲法の条文より首相の言い分が優先するような事態がまかりとおるようでは、安倍さんが好んで使う「法治国家」の理念にも反する。








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