舛添都知事が憲法改正をテーマにした新刊を刊行し、その中で立憲主義を擁護している。氏は、自民党の憲法草案について、「憲法は国家権力から個人の基本的人権を守るためにあるという立憲主義を理解していない人が書いている」と批判し、また、良き伝統を子孫に継承するとした前文や、家族の助け合いを求める条文などについて、「価値判断を憲法に入れるべきではない」と指摘している。
一昔前なら、こうした意見はごく普通の常識であったものだが、今日では新鮮に聞こえるようになったというのは、やはり時代の変化のせいだろう。今の日本では、個人の権利よりも全体の利益のことが優先して語られるようになっている。その中で、舛添氏のこうした主張が新鮮に聞こえるわけだろう。
自民党の今の憲法草案の作成過程には、安倍さんは加わっていない。だから、安倍さんがいよいよ憲法改正に踏み出そうというときには、もっと自分の理想に近いものに書きかえるだろう。それが、現草案よりもっと権威主義的で、全体主義的なものになるだろうことは、十分に予想される。
なにしろ、今の草案でも十分に権威的かつ全体主義的傾向を帯びているのだから、それよりもっと右寄りの草案ということになれば、おそらく明治憲法に近いものになるのではないか。
つい最近までの都知事で、今は極右政党の代表となっている石原氏の持論は、現行憲法を廃棄して明治憲法を復活させようというものだ。今でこそ石原氏はこれを公然と主張しているが、都知事在職中は遠慮していたものだ。それが都民に受け入れられるような言説ではないということをわきまえていたからだろう。ところが、いまでは安倍首相以下、右翼政治家たちの言説が日本の政治状況を席巻しているありさまだ。ほんの短い期間に、日本がこんなに変ってしまったというのは、大変なあやうさを感じさせる現象だ。はたして日本は、この流れに沿って突っ走っていくのだろうか。
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