ウクライナのヤヌコーヴィチ政権があっけなく崩壊

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ウクライナのヤヌコーヴィチ政権が、おどろくほどあっけなく崩壊した。キエフなどでの反政府運動が激化し、百名近い死者を出すに至り、警察部隊が政権のいうことを聞かなくなり、それに伴って政権幹部が相次いで離反する事態が生まれ、ヤヌコーヴィチが孤立に追い込まれたことが原因らしい。ヤヌコーヴィチと少数の腹心は、飛行機で国内脱出を図って成功しなかったともいわれ、現在行方不明中だとされている。ともあれ、彼が大統領職に復帰することは、現実的ではなくなった。

この事態を前にして、世界中で様々な反応が生じている。アメリカとEUはこの事態を基本的に歓迎し、ウクライナが今後民主的な手続きを経て新しい政権を樹立し、将来的にEUに統合されていくことを期待している。一方ロシアは、反体制派の動きを強く非難し、これをクーデターだと断定したうえで、今後ヤヌコーヴィチを含めた形で、将来のあり方を協議するべきだと主張している。

この事態をロシアのいうようにクーデターと見るべきなのか、それとも民主主義勢力による「革命」と見るべきなのか、については政治的立場によって違って見えよう。だが少なくとも、エジプトのクーデターとは違うといえる。エジプトでは、モルシは反体制派にたいして暴力的弾圧をしていなかったにかかわらず、軍が彼を拘束して体制を転覆させ、これに抗議するモルシ支持派に暴力的弾圧を加え続けた。いまでもその弾圧は続いている。

これにたいして、ウクライナでは軍が出てくることはなかった。民衆とヤヌコーヴィチとが真正面から対立しただけだ。その民衆に向かってヤヌコーヴィチは血の弾圧でもってこたえた。そこがエジプトと違うところだ。エジプトでは軍が暴力を用いて政権の転覆を図ったのに対して、ウクライナでは政権が暴力をもって民衆を弾圧し、その結果国民的な支持を失って崩壊したといえる。だからこれは、クーデターではなく革命といえなくもない。

今後の展開がどうなるかは、いまのところ見えない。事態の進行が予想をはるかに超えてドラスティックだったからだ。

アメリカは、事態が平和的に進むようにロシアの支援を要請しているようだ。ウクライナはいま、政治的にも経済的にも厳しい状態にある。政治的には、ヤヌコーヴィチに変ってウクライナをかじ取りしていけるほどの政治勢力が成熟していない。拘束から解放されたヤヌコーヴィチの政敵チモシェンコが、次の大統領選に立候補する意向を示したそうだが、その彼女にしたって、ウクライナを統合していけるだけの能力があるのか、疑問が多いとされる。

ともあれ、ヤヌコーヴィチの後ろ盾となってきたプーチンにとっては、実に面白くない展開だったと言える。彼がウクライナを、すんなり西側に手渡すとは考えにくい。今後どう展開していくのか、見守ることくらいしか我々にはできない。







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